精油は5年はもちます

そして理想的な保管方法は



NHKのテレビ番組『ブルガリアの薔薇の谷』

平成14年10月5日夜の10時20分〜11時に放送されたNHKのテレビ番組『ブルガリアの薔薇の谷』をご覧になった方も沢山いらっしゃったでしょう。アロマに関心のある人間にとり薔薇、ブルガリア、ダマスクローズなどなどは馴染みのある言葉です。共産主義独裁体制が崩壊した後は集団農場労働者が、いわゆる自作農(自前百姓)になったわけですが、そうなってからの薔薇作りの苦労や、地境争いが長引いて薔薇の植えつけが進まない話などを興味深く見ました。

私個人としてですが、とりわけ興味を引いたのが値段と精油の保存性についての2つでした。値段については2002/10/14の「香りの日誌」に書きましたので、そちらをご覧になって下さい。

ブルガリアの薔薇香料研究所の模様が紹介されました。1902年以降の毎年の精油が試験用に大瓶に詰まって保管してあります。別に冷蔵庫の中などではなく事務室の一角にあるありきたりの書類だな風の鉄製ラックに見えます。
ここでその年に取れた、取れたての「若い精油」は保管されている精油と混ぜ合わせれ最適な香り作りがなされるとの解説でした。

100年ものの熟成精油 ! ?

薔薇精油はブレンドされます。それも何年も、何十年もたった熟成した精油とも混ぜ合わせれるのです。勿論古い年代物は量が少なくなっていますから、ブレンド中の年代物の割合は小さいでしょうが、それにしても1902年といえば100年も昔の精油がブレンド成分のたった僅かとはいえ入っているのですから、驚きです。

ワインの熟成によりブーケが変化し練れてくるように、精油の香も年月とともに変わっていくのでしょう。この変化を「薄まる」というマイナス面での評価にするのか、「角が取れて丸くなった」とか、「熟成した芳醇の香り」などとプラス面での評価をつけるかは難しいのではないでしょうか。
若い精油のきつい香が薄まるとは、香が丸みを帯びると言い換えられると思うのですが。ものは言いようです。

精油は短期間しかもたない、どんどん使って買い替えるべしと言い張って得をするのは精油の販売業者ですから、或いはこの迷信は販売戦略なのかも知れません。踊らされて損をしないように気を付けましょう。

このサイトの『精油辞典』の参考に使っているドイツ人女性ジャーナリスト、ゲルティ・ザメルの著書『アロマシュトフェ(Aromastoffe)』の8ページ目に出ている部分を翻訳しておきました。ドイツではこの認識が一般的なようです。アロマラントのフォルティス社長も同意見でした。別にドイツ人が倹約家なので - 本当に倹約好きの人が多いのはたしかですがそれは別の話です - 「精油は長もちする....、頻繁に買い替える必要はない」と主張しているわけではありません。
私自身、10年以上も昔に人にもらった北海道北見の薄荷油(ペパーミントオイル)を今でも重宝して使い続けています。北見では外国産との価格競争に負けてもうハッカの栽培は止めてしまったそうですから、国産薄荷の貴重な名残りだと思って大切にしています。
油を販売する立場としては、むしろ安心していろんな種類の精油を豊富にそろえて香りの違いを楽しんで下さい、発見の喜び、自分好みの精油を探し出して下さいと言いたいのですが、如何でしょうか。


精油の保存性と保管方法(Haltbarkeit und Lagerung)

精油は濃い色のガラスビンに入れ、きちんと蓋を閉めて保管してください。温度変化や熱の影響を受けないように保存しましょう。
温度セッシ8度〜12度の暗く冷たい場所で保管するのが理想的です。
精油が乳状に濁ってきたら経年劣化の兆候です。こうなってしまった精油は決して肌に付けないようにしましょう。炎症を起こすおそれが大いにあります。
大部分の精油は通常5年〜10年もちます。なかには20年も保存できる精油もあります。
品質保持期限


2003/01/18 追記
ラベルに印刷された品質保持期限についてドイツ店より詳しい情報が入りましたので記載します。

1. ふたを開けた後にも有効
この期限はビンのふたを開けた後にも有効です。精油をご利用になった後、きちんとふたを閉めて冷暗所に保管すれば、利用回数の多寡に関わらず、印刷された保持期限内は品質に変化は生じません。

2. 期限後でもまだ有効
品質保持期限が切れた後でも、精油が駄目になるわけではありません。品質が劣化する「可能性が生じる」に過ぎません。湿気の少ない冷暗所で保管すれば期限切れから5年経過後でも問題なく使用可能です。